「機能性低血糖症」が公言しにくい理由

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AKB48のメンバーのひとりが、機能性低血糖症と摂食障害を告白したニュースについて。

摂食障害もだけど、機能性低血糖症（以下、血糖調節異常と書きます）はひとから理解されにくい病態だ。本人でさえなかなか理解できないんだから。この方が勇気を出して公表したのは、休業した理由を言わないことで勝手な噂が広まって、誹謗中傷に遭う可能性があったからなんじゃないかと予想してる。いまどきのアイドルは命がけだ。お仕事が続けられることも大事だけど、からだをこわさないように生活してほしいと思う。若いからって無理しちゃあかんで。

「機能性低血糖症」が公言しにくい理由その1 【診断基準がふわっとしている】

さてこの病気、病名だけですぐ理解してくれるひとが少ないのに加えて、決定的に問題なのが、「この病気と診断する根拠は〇〇で、このような治療をすれば治ります」とはっきり説明できるようなエビデンス（証拠、証明）がまだまだ欠けているということ。

糖尿病のお医者さんだったり摂食障害の専門だったり、あるいはアメリカのダイエット研究者だったり、専門がバラバラのお医者さんたちが、それぞれの見解を元にそれぞれ情報を発信しているけど、みんな言ってることが微妙に違う。診断方法もまだそこまできちんと確立されてないような感じ。そんなふうに情報が曖昧だから、そんな病気はインチキだ、高いサプリメントを売るための商売なんじゃないかと訝しむひともいる。うーん。確かにいまの状況を見れば、そう思うひとがいてもおかしくないよね…。自分だって、もし何も知らなかったら「うさんクセー」って思ってただろうし。まして、本職の医療関係者であれば、ふわっとした基準で診断せざるを得ない「病気」なんて支持しないのが当たり前だと思う。

今はもう「鬱病は怠けてるだけ」なんて言ったら時代錯誤、白い目で見られるけど、血糖調節異常もそれと似たような状況で、「そんな病名知らないけど、それほんとに病気？ネットにインチキだって書いてあったよ？」なんて言われる可能性のある病名を、じぶんからわざわざ公表したくないよね…。個人的に納得するのと他人を納得させるのはまた別の話だからね。

「機能性低血糖症」が公言しにくい理由その2 【病気そのものの説明がめんどくさい】

知名度がないせいもあるけど、一からどういう理由で不調が起きるのかを説明しないといけないのが、マジ面倒。じぶんはひとに説明するとき、病名や診断基準、治療方法についてはモグモグごまかしてたりする。血糖値の推移が〜、とか、インスリン値が〜、とか説明しても全然わかってもらえない。それより、「ときどきバタンって失神するんだよ」って感じで、簡単に、かつ具体的な症状を先に言ったほうが先入観なく理解してもらいやすい。病名はまだ言いにくいけど、時間が経てばまた少しは変わってくるのかなぁと期待してる。

「機能性低血糖症」が公言しにくい理由その3 【症状の個人差を説明しにくい】

それに、病気の知名度が無いのはしばらく先まで我慢するとしても、そもそもの問題があって。この病気はインフルエンザみたいにハッキリわかる症状が無くて、個人差が大きい。この説明しにくさは病気の知名度が上がってもどうしようもないかもしれない。病名でぐぐると、摂食障害につながる、うつ状態になる、感情がコントロールできないとかの症状が例として挙げられることが多いけど、低血糖症持ちのひとのツイッターとかブログを読むと、かなり個人差があって人それぞれだという気がする。

私の場合は皮膚の炎症と不眠症が出てたけど摂食障害の傾向はほぼ無かった。でも、お腹がすいたときの脳みそ大パニック感は半端なかったから、人によってはそれが過食につながったりするのかも。あるいは食欲がコントロールできない怖さから拒食になることもあるんじゃないかな。病気ってだいたいそうだと思うけど、原因も結果としてあらわれる症状も人それぞれで、なかなか本人でさえ「この症状はこれが原因だ」とは断言できないものだと思う。

最後に：公言してなくても困ってるひとは確実にいるのです

私がなるべく「機能性低血糖症」って言葉を使わないで、敢えて「血糖調節異常」って言ってるのは、やっぱりまだこの病気は世間的には受け入れられてないからです。なるべくひとに理解されやすい言葉で説明しようとするとどうしても病名より具体的な症状（不眠症、失神、皮膚の炎症）が先になるから。隠してるわけではないけど、私の説明は拙いし、誤解されやすいだろうというのは認めてるわけです。じぶんが困ってることの説明をしようとして、逆にめんどくさい誤解を受けるなんて最悪じゃないですか。

だから、もし身近なひとが血糖調節異常と診断されたとき、「そんな病気聞いたことないよ！インチキじゃないの？！」って頭ごなしに否定しようとするひともいると思うけど、少し落ち着いて、ありのままの状況を整理して、本人が困ってる症状を治していくのにまずなにをすればいいかを一緒に考えるのがいちばんいいんじゃないかなぁと思います。

久しぶりの長めエントリーでした、おわり。